不動産を遺産相続した場合の果実は誰のものか

相続は人が亡くなった場合に開始します。亡くなったかどうか不明で連絡の取りようがないとき、家庭裁判所に請求して失踪宣告がなされた場合も同様です。相続が開始すると被相続人に属した権利も義務もすべて相続人に承継されます。しかし、被相続人だからこそ持っていた権利、つまり一身専属権は承継されません。例えば、甥が就職するときに引き受けた身元保証人の地位、農作物の収穫を手伝うよう委任されていた場合の受任者の地位などは、被相続人だからこそ成立する契約なので承継されません。
では、遺産の中に不動産が含まれており、それを被相続人が賃貸していた場合を考えてみます。賃借人Xは、毎月賃料を被相続人Aに支払い土地の一部を畑にしミカンを収穫していたとします。この場合民法では、賃料を法定果実といいミカンを天然果実といいます。Aが亡くなったのだから賃貸借契約は当然に終了し、Xは土地を明け渡す必要があるでしょうか。先に記載したように相続人は被相続人の義務も承継します。ですから、賃貸借契約は終了しません。その代わり、賃料支払いを受ける権利は遺産相続します。

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上記の関係で別の事例ではどうでしょうか。遺産相続した土地を賃借人Xが明け渡す契約が成立したとします。現実に明け渡すまでXは自分が植えたミカンをその間も収穫しています。この場合のミカンは誰の者になるでしょうか。土地の所有権は相続人が承継しているので、相続人のモノともいえますし、賃借人が植えたミカンだからXのモノともいえます。賃貸借契約を解除する前にXがミカンの木から収穫していればXのモノになりますが、解除後は相続人のモノになります。ミカンのような天然果実は、元物から(つまり木)分離するときに権利を持っている者に帰属すると規定されているからです。
このように遺産相続においては権利関係が複雑になることがあり、まして不動産が含まれるとその傾向が高くなります。賃貸不動産を相続した途端に賃借人に修繕依頼をされ、相続人に責任があるのか戸惑ったり、固定資産税の負担も生じます。加えて相続人が複数であれば、誰がいくら負担するのかの問題もあるでしょう。こうした問題を回避する方法として、被相続人に遺言書を書いてもらい遺産の帰属を明確にしてもらったり、遺言書がないならば遺産分割協議を速やかに行うことが考えられます。どうしても相続人同士で解決できないときは、専門家など第三者に入ってもらい解決するのが最善といえます。

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